今年は青森に2回行かせていただきましたが
秋の終わりのお誘いいただいた旅行先もなんとみちのく!
今年は東北にご縁がある年になりました。

まず向かったのは岩手県の遠野。
民俗学の父と呼ばれる柳田国男が著した遠野物語は
遠野地方に語り継がれる昔話や説話、民間信仰、伝説を集めて
明治42年に刊行されたものです。

600から700編も伝承されている物語のうち
119編を上梓した中でも有名なのは
河童、座敷ワラシ、天狗、神隠し、オシラサマのお話など。
遠野物語を巡る旅は、異世界の物語を生んだ
遠野の自然や風土に触れる旅でもあります。

東京から新幹線で新花巻へ、釜石線で1時間弱で遠野へ。

釜石線は宮沢賢治の銀河鉄道にちなんで
銀河ドリームラインと呼ばれていて
駅名も別名がついており異次元気分アップ(笑)  

遠野駅では河童ポスト、河童の銅像、河童交番がお出迎え。
異世界の住人が普通に道を歩いていそう。

遠野は四方を山で囲まれた盆地で、冬は極寒の地です。

葉を落としきる前の山々や澄んだ空に流れる雲、
収穫を終えて一息ついている田畑が広がる風景は
日本のふるさとの原風景。
民話の里は心のふるさと。
呼吸の度に心も体もやすらいでいきます。
到着時、夕暮れ時の遠野は寒波到来で
北風がゴウゴウ唸っていました。
ダウンを羽織りマフラーに首をうずめても寒い!
遠野では寒風が吹き荒れると、
サムトの婆が来ると言うそうです。
神隠しに遭った娘が年月が経って婆様になって
山から戻って来る時に嵐を伴ってくるそうです。

寒さの中、遠野の歴史、風土、暮らしを学びに

急いで閉館前に市立博物館へ。
2階のシアターでは遠野物語を大画面で
水木しげる氏のアニメなどで見れます。
この時間は私たちの貸し切り状態だったので
見たい物語を見放題!(笑)

遠野は閉ざされた集落かと思っていましたが、
昔は7つの街道が交わる交通の要所で賑わっていたそうです。
江戸時代は城下町でも栄えました。
行き交う旅人や商人などからもたらされた
様々な物語や話題が遠野の土地で熟成されました。

魂は山から来て山に還るという山岳信仰もあり
山はあちらの世界とこちらをつなぐ異世界であり
異世界の山に住む山人がいるということで
天狗や神隠しの話が伝承されています。

山は恵みをもたらし生かせていただく所、
大自然への畏怖の念と敬意、感謝を忘れないようにと
山の物語は教えてくれています。

また遠野は有数の馬の産地でもありました。
馬を育てるのに適した気候風土で
昔は馬市でも賑わっていたそうです。
馬は農作業の大事なパートナーでもあり、
南部曲がり家といわれる昔の農家には馬小屋が家の中にあり
馬っこ、と呼んで家族同様に一緒に馬と暮らしていました。

(通りにあるベンチは馬っこです♪)

そのような暮らしの中で
オシラサマという物語が生まれたといわれます。
オシラサマは馬と娘の悲恋の物語。
馬と結婚したいという娘に怒った父親が馬を殺してしまいますが、
馬は天に昇るとき娘も一緒に連れて行ってしまいます。
後悔で涙を流す両親の夢に娘が現れ、
蚕を授け絹糸の取り方織り方まで教えて
家や土地を豊かにしてくれたというお話です。

馬と娘の姿は桑の木で彫られ祀られ
農業、養蚕の神様として信仰されています。
蚕を上から見ると馬の顔に見えるそうですよ。
よいお知らせをしてくれる神様でもあり
オシラサマと呼ばれて親しまれ信仰されています。

遠野の宿泊は博物館横にあるホテル「あえりあ遠野」。
こちらでは遠野物語を語り部さんが語ってくれます。
この夜は宿泊客10数人が座敷に集まり
オシラサマの話など3編に耳を傾けました。
方言での(標準語を交えながらの)語りは
「昔あったずもな」から始まります。
語り部さんのお話に夢中になっていく様は
寒い冬に囲炉裏端でおばあちゃんが語る物語に
ワクワクしたり涙した子供たちと同じ気持ちでした。

語り部さんの声は優しく心に響き、
「どんどはれ」という言葉(おしまい)で終わったときには
感動で涙が流れちゃっていました。
遠野物語は文章、画像で知ることができますが
ぜひ昔ながらに語り部さんから聞いていただきたいです。

遠野は三陸からの新鮮な海の幸ももたらされ
ホテルのレストランでいただく和食も堪能。
郷土料理のしょっつる汁もおいしい♪

翌日は寒いながらも気持ちの良い青空。
昔の暮らしを知れる伝承館へ。
こちらでも語り部さんから物語が聞けます。

囲炉裏を囲んで地元のお婆ちゃまたちが
語らいながら柿を剥いて干し柿を準備していました。
皆さんが気軽に話しかけてくださり楽しい時間。
遠野の皆さんは外からの旅人にオープンですね♡

伝承館にはオシラ堂があり千体のオシラサマが祭られ圧巻。
3.11の震災の後にはたくさんの方が
復興の願いを込めて祈りに訪れたそうです。
私も願いを布に書きオシラサマに着せて手を合わせてきました。
何とも言えない温かく大きな愛を感じるオシラ堂でした。

次に向かったのはカッパ淵。
常堅寺の裏を流れる小川ですが
かつてこの淵にはカッパが多く住んでいて
人々にいたずらをしていたという伝説が残っています。

狛犬もカッパ仕様で頭にお皿があります。

さらさらと音を立てて流れるきれいな水の小川に
カッパの好物のキュウリがぶら下がっています。
草むらに隠れているカッパが
私たちが目を離した隙に取りに来そうです。
カッパ達のためにも川は美しいままに、
自然を愛し、自然を敬い、守ってきた遠野の人々。

川や山、そして吹く風の中にも
目に見えない存在を感じ、自然に畏怖の念を抱き、
自然と、異世界の住人とともに生きている遠野。
昔の人々の思いは伝承の物語とともに
今も受け継がれていきます。

柳田国男は遠野物語の冒頭で
「これを語りて平地人を戦慄せしめよ」と記しています。
文明が発展し人は外国のものに目を向け
機械化が進み、科学が進んでいく明治の時代。
このような流れに警鐘を鳴らす目的で著したということです。

どんなに文明や科学が進化しても
自然に対して、目に見えない世界に対しての
畏怖の念、敬意を忘れないように。

新花巻へ戻る快速電車から遠野の山々を見送る。
葉を落とす木々の間から異世界の住人たちが
私たちを見送ってくれているようでした。

民話の里、遠野は優しく温かい気に満ちた里でした。
遠野物語を巡る旅はこれにて

「どんどはれ」